2018/10/8 第57回 まさかのお話

お世話になります。
神戸不動産リアルティの白石です。

連続台風が過ぎ去り、ようやくほっとした今日この頃、
快晴の秋空を眺めながら、事務所でブログを書いています。

気温も程よく、どこかにのんびりとお出かけしたくなりますね。
スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋、心地よいこの季節、皆さんもぜひ堪能して下さい。

さて、不動産業界で働き始めて今年で16年となります。
取引させて頂いたお客様の数はもう数えきれないくらいとなりましたが、
その中で特に印象残っている方のエピソードというか、
少しびっくりした「まさかのお話」を紹介をさせて頂きたいと思います。

本名は出せないので、「岡田さん」(仮名)と呼ばせて頂きますが、
今から11年前、私が26歳の時、前職の三菱UFJ不動産販売に転職した1年目のある日、
岡田さん(仮名)とお会いさせて頂くこととなりました。

「ピンポーン。」

事務所のベルが鳴ります。

モニターには長靴と履き大きなリュックを背負った、
50代くらいの男性の姿が映っていました。

当時、同じキャリア採用として私よりも1年先に入社した先輩が、
岡田さん(仮名)をモニター越しに見るなり、

「ごめん、俺忙しいからお前対応しといて」

!?

今まで暇そうにしていた先輩が急に忙しくなったので、私が担当することになり、
私は岡田さん(仮名)のいる応接室へ向かいました。

岡田さんは(仮名)雨の日でもないのに黒色の膝ぐらいまである長靴に、
登山をするかのような大きなリュックを背負っていました。

名刺を渡し、今日はどのようなご相談で、と聞くと、

「岡田(仮名)と言います。このマンション買いたいんですけど。」

はい?

岡田さん(仮名)はコンビニ等に無料で置かれている住宅情報誌をリュックから取り出し、
物件が掲載されているページを指さしました。

マンション名は伏せますが、中央区の居留地近くにある分譲マンションで、
しかもそのマンションの中で一番高い最上階東南角部屋で、
当時9800万円で売り出されていた物件。

え?「見たい」じゃなくて、いきなり「買いたい」!?

失礼は承知なのですが、住宅情報誌を見て、突然来店され、
開口一番に1億近いマンションが欲しいと言われて、

「はい!ありがとうございます!」
(うひょー、ラッキー!)

と、なる訳もなく、何か裏があるのではと私は不安になりました。

当時勤めていた会社は国内最大の金融グループ内の三菱UFJ信託銀行の子会社で、
担当させて頂くお客様は信託銀行やグループ会社と取引のある法人や個人の方がほとんどで、
中には企業オーナーや資産家など一般的に富裕層と呼ばれる方が多くおられました。

配属された店舗も信託銀行と同じビル内にあり、しかも空中店舗。
良いのか悪いのか分かりませんが、新規のお客様がふらっと来店されることはほとんどなく、
たまに来店される方がいると、あれ?(ざわざわ)という感じになっていました。

不安になった私は、とにかく質問をせずにはいられませんでした。

今のお住まいは?
今のお仕事は?
なぜこの物件ですか?
資金はどのようにお考えですか?
他社からも物件情報が出てましたがなぜ弊社なんですか?
物件はいつ見たんですか?

もう質問攻めです。

勤めていた会社が銀行系の会社でしたので、反社会的勢力やトラブルには敏感で、
怪しい人物ではないか?変な購入動機ではないか?面倒な取引にならないか等、
普段から研修や勉強会で徹底した教育を受けてたので、
私はもしかしたらマネーロンダリングの類ではないかと考えていました。

ちなみに質問の回答はこうでした。

今のお住まいは?

「1R」(賃貸)

お仕事は?

「ハローワークに通っています」(なかなか仕事が見つからない)

何故この物件ですか?

「資産価値があるから」

資金はどのようにお考えですか?

「現金」

他社からも情報出てましたが?

「お宅が一番大きいから」

物件はいつ見たか?

「見ていない」

大きなリュックですね?

「水が入っている」

結局何を聞いても???です。

1Rに住んでる方が高級分譲マンションの最上階東南角部屋に?
就活中に現金で?しかも物件見ていないのに欲しいとか、、、。
偏見はよくないのですが困った私はとりあえず席を外し、上司に相談することにしました。

あの、〇〇所長、今来店されている方と応対中なんですが、
9800万円の〇〇マンション買いたいそーなんです。

「おぅ、ええ話やないか。」

それが長靴履いて大きなリュック背負って1Rに住んでる就職活動中の方なんです。

「は?」

さっき来店されていきなり現金で買うって言ってるんです。

「ほんまかいな!?」

上司からは動機が分からない、素性も分からない、とにかく怪しい。
現金持ってるのであれば、どこの銀行と取引あるかとか情報をもっと聞き出せ、との指示。

私は再度応接室へ戻りました。

続く。